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原石について
私たちは「玉」と言うとき、石材であることは分かっていても、どのような石材なのかあまり意識しません。
ある人はヒスイの玉を思い浮かべるでしょうし、子供は考古学体験講座で作った勾玉を思い出すかもしれません。 この2つは石材として大違いです。
少し勉強してみましょう。
岩石と鉱物
これまで玉の種類として、ヒスイ、碧玉、緑色凝灰岩、滑石などを主に紹介してきました。
このほかにも、水晶やメノウなどもあります。
岩石の話をするときに、安山岩や玄武岩という分類や長石、石英という石の名前を聞くことがあります。
はたして「玉」はどんな岩・石でしょうか?

岩石と鉱物の違い

鉱物とは、その組成がほぼ単一なもので、なおかつ単結晶であるものを指します。組成が単一であっても複数の結晶を含む場合は岩石として扱われます。上に記した石英や長石は鉱物になります。
岩石とは、組成が均質ではなく、いくつもの鉱物の集合によって構成されているものを指します。
岩石の「もと」は何でしょうか。岩石はマグマが冷えてかたまったものです。冷える時にはいくつもの鉱物かを取り込んでかたまりになるのです。見た目には1つのかたまりでも、いろんな鉱物が含まれています。
花崗岩は石英、長石、雲母などの鉱物の集合からなっているため、鉱物ではなく岩石となります。

岩石の種類

岩石の出来方(生成要因)や組成の違いによって細かく分類できますが、ここでは中学校で学ぶ分類を示します。
一般に、岩石はでき方の違いにより、火成岩、堆積岩、変成岩に大別されます。
火成岩 - マグマが地下で冷えて固まってできたもの  
堆積岩 - 土砂や降り積もったものなどが地表や水中にたまってできたもの  
変成岩 - 地球の強い熱や圧力の作用で火成岩や堆積岩が地下で変化したもの
【火成岩】
火成岩の分類は、岩石の組成と組織を基準にします。 (岩石の成因を基準にした分類もありますが、中学校ではつかわないようです) 火成岩のもととなるのはマグマです。地球上に多くの種類の岩石が存在する理由は、主に
@マグマの種類がいろいろあること (組成の多様性)
A熱いマグマから冷たい岩石になるまでの冷え方がいろいろあること
によります。マグマの種類は石の組成に、冷え方は石の組織に反映されます。

冷え方組成の違い(構成する鉱物の違い)
白色系灰色系黒色系
火山岩
 地表近くで急に冷えて固まる
流紋岩
(りゅうもんがん)
安山岩
(あんざんがん)
玄武岩
(げんぶがん)
深成岩
 地下深くでゆっくり冷えて固まる
花崗岩
(かこうがん)
閃緑岩
(せんりょくがん)
斑レイ岩
(はんれいがん)
【堆積岩】
堆積岩のもととなるのは、いろいろな岩石や鉱物が細かくつぶれた粒子が積み重なって出来たものです。土砂系の堆積岩は粒子のサイズで分類しますが、生物起源の堆積岩は個別の分類があります。
@土砂系の堆積岩の例
礫岩(れきがん): 礫を主体とする岩石 
砂岩(さがん): 砂を主体とする岩石
泥岩(でいがん): シルトや粘土を主体とする岩石
A火山灰の堆積岩の例
凝灰岩 : 火山灰を主体として積み重なった岩石
B生物起源の堆積岩の例
石灰岩 : 石灰質の殻をもつ生物 (サンゴ、有孔虫など) 起源の岩石
チャート: 珪質の殻をもつ微生物 (放散虫、珪藻など) 起源の岩石
【変成岩】
変成岩のもととなるのは、既にある岩石です。高い温度・圧力を受けることによって、性質が変化した変成岩が新たにつくられます。
変成岩の分類には、原岩の種類や温度・圧力条件など、幾つかの基準があります。温度・圧力の程度は岩石に反映されるため、温度・圧力を基準にした分類がよく使われます。
@主に強い熱をうけてできた熱変成岩 (または 接触変成岩)の例
 小さな結晶がすきまなく組み合わさっている特徴があります。
ホルンフェルス : 主に泥岩が熱を受けて緻密になった岩石
結晶質石灰岩 (大理石) : 石灰岩が再結晶して粗粒になった岩石
A熱と圧力を同時に受けてできた広域変成岩の例
 結晶が同じ方向に並んでいるため、薄くはがれやすい特徴があります
結晶片岩 : 熱と高い圧力を受けて縞状の組織を持つようになった岩石
片麻岩 : 高い熱と圧力を受けて縞状の組織を持つようになった岩石
蛇紋岩 : かんらん岩が熱と圧力を受けた岩石

石のみわけ方
石のみわけ方   出典:石と人(守山市教育委員会)

鉱物の種類

同じ成分から成り、性質が均一な天然に存在する無機質な物質で、集合体となって岩石をつくり、現在約2,000種類以上、見つかっています。殆どの鉱物が結晶であり、火成岩、火山灰に含まれています。ほぼ同じ元素で出来ているため、色・硬さ・割れ方などの性質が、ほぼ一定です。
鉱物の種類ですが、先ず鉱物は、無色鉱物と有色鉱物の2種類に、分ける事が出来ます。
@無色鉱物:色が透明、または、白色の鉱物
  石英・長石など
A有色鉱物:色が黒や緑などの鉱物
  黒雲母(くろうんも)・角閃石(かくせんせき)・輝石(きせき)・カンラン石・磁鉄鉱など
火成岩にどのような鉱物がどれくらい含まれるかによって色合いや結晶の状態が違ってきて岩石の種類が決まるのです。
玉の原石
前節の岩石の分類や鉱物の分類を見ていると「玉」の原石に当てはまる種類がほとんど見られません。
石の名前はどうやら2種類あるようです。前節での説明は地質学的な視点からの分類と命名でした。
一方、宝石や玉、装飾に使う石の名前は、古くから人々が色合いや形などから付けた通称なのです。
では、玉の原石はどんな岩石または鉱物なのか見ていきましょう。

岩石系の玉

【ヒスイ(翡翠)】
主に蛇紋岩や片岩の中に存在します。蛇紋岩は地殻の下のマントルが水を含んで変質したもので、プレート境界付近で起こる温度と圧力の変成作用の結果としてできる変成岩です。その中でも特定の温度圧力条件で「翡翠」と呼ばれる石になるようです。
鉱物学的には「翡翠」と呼ばれる石は化学組成の違いから「硬玉(ヒスイ輝石)」と「軟玉(ネフライト )」に分かれ、両者は全く別の鉱物です。しかし見た目では区別がつきにくいことから、どちらも「翡翠」と呼ばれています。
硬玉はモース硬度が6.5 - 7、軟玉は6 - 6.5、と価値の高い宝石の中では硬度が低く、石英よりも硬度が低いため傷がつきやすいです。
ヒスイ輝石の結晶は無色ですが、翡翠は細かな結晶の集まりのため白色になります。ただ翡翠に含まれる不純物や他の輝石の色のために様々な色合となります。
【緑色凝灰岩】
グリーンタフとも呼ばれますが、グリーンは緑色、タフとは火山灰が固まってできる凝灰岩のことを指します。地質学的には堆積岩に当たります。
緑色になるのは、岩石に含まれる輝石・角閃石などの有色鉱物が熱水変質により緑色の鉱物に変化したためであり、変成岩の側面もあります。
火山灰が堆積・圧縮されたものなので、粒子の大きさや圧縮の程度の違いにより硬度が大きく異なって、とても柔らかいものから硬いものまで存在します。
【滑石】
輝石、角閃石、カンラン石といった鉱物から成る岩石が熱水変成して生じる変成岩であり、色は一般に白で、ろうそくの蝋や真珠のような光沢を持っているために、これを主成分とする岩石は「ろう石」と呼ばれることもあります。微細な薄片状の結晶が集合し、固まっている産状を呈することが多く、不純物により灰色や緑色をしたものもあります。
滑石はモース硬度1の基準となる標準物質で、鉱物の中で最も軟らかいものの一つです。爪で傷つけることもできます爪の硬度は2.5度)。純粋なものは安定した硬度を示しますが、不純物が含まれる場合は硬度が高くなります。

鉱物系(ほとんど石英系)の玉

鉱物には多くの種類がありますが、玉の原石となるのはほとんどが石英系または石英と他の鉱物との混合物です。
火成岩ができるとき石英の結晶は、他の鉱物の結晶ができた後でその隙間に成長するため本来の結晶の形になれず、特有の結晶面が発達していないため塊状に見えるものを石英、肉眼で確認できる大きさで六角柱状の結晶のものを水晶、石英の非常に細かい結晶が網目状に集まり、緻密に固まった鉱物の変種を玉髄(ぎょくずい)と呼んでいます。
【水晶】
石英は六角柱状のきれいな自形結晶をなすことが多く、中でも特に無色透明なものを水晶と呼びます。 非常に硬く、モース硬度は7です。
【碧玉】
酸化鉄や水酸化鉄などの不純物をかなりの量含んでいて不透明な玉髄。モース硬度6〜7。不純物の違いによって、紅色・緑色・黄色・褐色など様々な色や模様のものがある。濃緑色のものが玉によく使われました。
【メノウ】
縞状の玉髄の一種で、蛋白石(オパール)、石英、玉髄が、火成岩あるいは堆積岩の空洞中に層状に沈殿してできた、鉱物の変種です。
【鉄石英】
酸化鉄を含む石英で、赤色または黄色で不透明のものが多いです。モース硬度は7です。

石のみわけ方
石のみわけ方(石器製作に使われる石材) 出典:石と人(守山市教育委員会)

その他玉と関連のある岩石

【サヌカイト】
火成岩のうちの安山岩に分類されるで黒色でち密な岩石。たたくと薄くはがれ、割れ口は鋭くナイフのように使えるので縄文時代より使われていました。モス硬度は7と非常に硬く玉つくりの石針として用いられました。
【紅簾片岩】
紅簾片岩は、玉に溝を付ける石鋸(いしのこ)として使われています。
変成岩の一種である結晶片岩中に微細な紅レン石が入っていて、緑色、銀色、ピンク色などの色を示します。地下深部で強い圧力を受けて再結晶したため、雲母のような板状の鉱物や角閃石のような柱状の鉱物が方向性をもって配列し、岩石は片理(へんり)と呼ばれる面状構造を持ち、片理に沿って板状に割れやすい性質を持っています。
【砂岩】
石器つくり、玉つくりで、砥石として使われる、堆積岩です。
粒の大きさが0.06〜2mmの砂粒が固まってできた岩石です。粒の大きさによって、荒砥石、中砥や仕上げ砥石として、その時の工程に応じて適切なものが使われました。
モース硬度とは
鉱物の硬さを示す尺度として「モース硬度」や「ビッカース硬度」がありますが、玉原石の場合はモース硬度が指標として使われています。
玉に多く使われている碧玉・ヒスイがモース硬度6〜7でガラスよりも硬く、滑石はモース硬度1で爪でも傷が付くくらいに柔らかく、緑色凝灰岩は範囲が広くモース硬度2〜6くらいのようです(具体的に数値が書いてある資料が見つかってなく図からの読み取り)。それでも大理石並みの硬さのようです。
モース硬度

(注)方解石:石灰岩の主成分鉱物で、鉱石として扱われる場合は石灰石、石材として扱われる場合は
   大理石と呼ばれる。

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